甲斐善光寺の霊牛碑

牛と善光寺

長野市の善光寺は「牛に引かれて善光寺」ですが、甲斐善光寺にある伝説では牛が一人で善光寺詣りをしています。

そして、その牛の角はここに寄進され、五輪塔を建てたと言われています。

− 霊牛碑の伝説 −
『 江戸芝牛町に、大切に飼われていた牛がおりました。延宝六年(1678)五月下旬のこと、その主人の夢に三晩続けて牛が現れ「私を甲斐善光寺へ参詣させてください。そうすれば、必ずこの家は末長く栄えるでしょう。」と告げたのです。
主人は不審に思っていると、六月初め牛は自ら小屋を出て、西に向かって駆けだしてしまいました。主人はあわてて後を追ったのですが、捕まえることができず、先日の夢のお告げも思いあわせ、放っておくことにいたしました。
一方この牛は、四谷口から甲州街道を一路ひた走り、六月十八日坂垣村善光寺に到着し、金堂に参詣いたしました。四足を折り伏して頭を垂れる様は、まことに人が善光寺の如来様を拝むかのようであったと申します。数刻の後、おもむろに立ち上がり、金堂の東側に駐まること七日間、八日目にようやく帰路につきました。
江戸に帰った牛は、三十日ばかりして突然死にましたが、その体には円光が輝いていたということです。主人は、日頃信仰する阿弥陀如来様の再来かとねんごろに供養し、牛の角を当山に寄進したのです。一本の角はこの地に埋め、五輪塔を建立して、信心深い牛の末代までの記念といたしました。
その後、霊夢のごとく主人の商売は繁盛し、福徳円満に暮らしたと伝えられております。そのため、開運福徳の霊牛として、この碑を参詣する人が絶えないのです。なお、この一本の角は寺宝として現存しており、宝物館で一般に公開いたしております。』
(案内板より)

甲斐善光寺の所在地:山梨県甲府市善光寺3-36-1